研究概要 |
超音波によるヘムオキシゲナーゼ1(HO1)の発現誘導機構の解析のために,HO1遺伝子の転写開始点上流10kb〜5.8kb,5.8kb〜4.5kb,4.5kb〜転写開始点の3種類のDNA断片をルシフェラーゼ遺伝子と結合し,それぞれの超音波に対する反応性を調べた.その結果,HO1遺伝子の転写開始点上流4.5kb〜転写開始点と転写開始点上流10kb〜5.8kbの2つのDNA断片に超音波照射によるルシフェラーゼ遺伝子の発現増強が認められた.超音波に反応したDNA断片にはそれぞれStress Response Element(StRE)と呼ばれる酸化ストレスに関係する配列が複数存在することから,これらが超音波に応答するシスエレメントであると仮定した.転写開始点上流4.1kbあたりに3つ存在するStREの上流側と下流側の欠失,および,StRE内の部位変異的変異の導入などで超音波による反応性は大きく影響を受けた.StREには転写因子Nrf2の結合により転写が活性化することが知られているが,昨年までの結果と合わせて考えると,超音波によるHO1の発現誘導においてもミトコンドリアを起点とする細胞内酸化ストレスの増強によりNrf2の核内移動を介した遺伝子発現誘導機構が働いていることが示唆される. 超音波による骨形成促進に関与すると考えられるシクロオキシゲナーゼ2,FLT-1,FOS遺伝子のプロモーターをクローニングし,ルシフェラーゼ遺伝子の上流に結合した遺伝子カセットを構築した.これらを導入した細胞に1MHzの超音波を0.1W/cm^2,10〜50% duty factorで5〜20分間照射した.24時間後と48時間後にルシフェラーゼ活性を測定したが,有意な誘導は観察されなかった.シクロオキシゲナーゼ2プロモーターでも誘導は見られず,予備実験の結果を再現できなかった.
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