研究概要 |
手術用水圧駆動マニピュレータの開発において,本年度は関節駆動部の基本設計および実機の試作と位置決め精度,応答性,剛性等の基礎的な特性の評価を行った.手術支援マニピュレータ(鉗子)に要求される機能として,(1)複数の鉗子を同時使用したとき術野を占有しないよう十分小型であり,(2)用途に応じて先端形状を交換可能とすること,また,(3)入孔中心の回転および前後動ならびにマニピュレータ先端の開閉,屈曲,回転の複数自由度を持たせるものとする.このために,まずアクチュエータとして十分小型のタイプを選定する必要がある.そこで,市販の小型シリンダを用い,これに当研究室で従来取り組んできた,精密位置決め用PWM制御手法を適用した.具体的には,精密駆動が可能となるディジタル位相差駆動を用いた.これは,デンソーとの共同研究により開発された,新しい流体位置決め制御法であり,これを用いることで,比較的単純な構造の制御弁を用いつつ高剛性・高精度でのアクチュエータでの位置決めが可能となる.またそのための制御弁としては油圧業界で汎用されている既存の部品をできるだけ使用し,信頼性のあるシステムを構成した. 試作された関節駆動部の正確な駆動特性を計測するため,レーザー変位計を用いてアクチュエータの変位を計測するとともに,適度な負荷を加えた場合の剛性を計測した.また,アクチュエータ内部流体の圧力の過渡特性を半導体圧力変換器を用いて測定し,設計の最適化のための指針を得た.さらに,リンク機構についての構造を提案し,シミュレーションを行った.これに基づき,来年度では他自由度関節を持った手術用水圧駆動マニピュレータを製作し,実験的な評価を行う予定である.
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