本研究では、手術ロボット操作におけるスレーブ機構と患部との接触を力覚提示する際の諸条件がマニピュレータ操作に与える影響を明らかにすることを目的としている。初年度は対象動作のモデル化と実験プロトコルの作成を行った。 まず、手術手技の中の各動作から触感に基づいて行ういくつかの基本動作に分解する。それぞれの基本動作について、遅延時間の影響を測定、分析する。現時点では、はさむ動作、押す/引く/ひねる動作を対象とした。このほかにも組織破壊を伴う切る動作、縫う動作なども重要であるが、ここではより単純な動作に限定した。 力覚遅延として、(1)動作に伴って連続的に力覚応答を示すが、一定の時間遅延がある場合、(2)内部処理や通信遅延を想定して、一定の不感期間の後に応答がある場合の2つのパターンを設定した。これまでの予備実験で(2)の不感時間がランダムに変化する遅延パターンでの測定も行ってみたが、明瞭な特性が得られなかったので除外した。 基本動作に対して2つの遅延パターン下での物理心理実験を行う。また、基本動作による簡単なタスクを設定して、遂行時間や精度への影響を測定する。 次に内視鏡/腹腔鏡下手術を想定して、カメラ映像上での動きと提示する力覚提示に遅延を設けて、基本タスクへの影響を測定、分析する。 組織との接触の微妙な触感を執刀医により明確に触知させるために、提示する力覚を増幅させることが考えられるが、これによる操作上の影響を測定、分析するためのプロトコルを現在設計中である。次年度はこれらの実験系を実装し、測定実験を行う予定である。
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