研究課題
基盤研究(C)
本研究では、手術ロボット操作においてスレーブ機構と患部との接触を力覚提示することを想定して、力覚生成の際に生じる遅延がマニピュレータ操作に与える影響を明らかにすることを目的とした。スレーブ操作の基本動作の中から、垂直応力を生じる「押す/引く」動作、ずり応力を生じる「ずらす」動作を対象に分析した。力覚生成の処理系に通信遅延や計算処理遅延が発生することを想定して、(1)動作に伴って連続的に力覚応答を示すが、一定の時間経過後に応答が提示される場合(通信遅延)(2)一定の不感期間の後に応答がある場合(計算遅延)の2つの力覚遅延のパターンを設定した。2種類の基本動作に対して上記2遅延パターン下での心理物理実験を行った。遅延時間は100ms以下では5ms毎、100ms以上では10ms毎に変化させ、各遅延時間を増加系列、減少系列、ランダム系列の3種類について変化させて提示した。心理物理実験は20歳代の学生15名(垂直応力)、12名(ずり応力)の被験者に対して行い、応力応答の遅延を知覚する閾値を求めた。力覚の提示のみで行った実験では、垂直応力に対しては20〜30ms(通信遅延)および5ms(計算遅延)、55〜60ms(通信遅延)および45〜50ms(計算遅延)となり、ずり応力に対する遅延知覚が垂直応力に比べ鈍いことが明らかになった。次に映像提示と力覚提示を同時に行い、同様の閾値測定をずり応力に対して行った。映像は、被験者の操作に同期して提示するパターンと遅延した応力応答に同期して提示するパターンの2条件で実験した。その結果、操作同期では80〜85ms(通信遅延)および60〜65ms(計算遅延)、応力同期では70〜75ms(通信遅延)および55〜60ms(計算遅延)となり、映像提示により遅延知覚が鈍化すること、遅延の無い映像により遅延知覚がさらに鈍化する傾向が見られた。得られたこれらの知見から、違和感の無い応力応答を生成するための設計指針と無知覚な遅延に対する安全性確保のための基本データが得られた。
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