全国の大学病院を始めとして、すでに多くの医療機関において電子カルテの本格的運用が始まっている。一般に医療機器は第3者機関の監査等の下に、厳格にその品質がコントロールされている。しかしながら、電子カルテなどの医療情報システムの安全性・信頼性についてはその開発者に任せられており、現在のところ、客観的な評価や監査は行われていないという重大な問題がある。 そこで、本研究では、1)電子カルテのシステム障害事例を収集、分析する、2)電子カルテに関連した診療行為のインシデント、アクシデントを収集し、その原因を分析する、3)これらのリスク分析に基づき、安全性・信頼性を高めるための電子カルテに対する要求モデルを構築する、4)要求モデルに基づき、実際の電子カルテを評価するためのテストケースを作成し、電子カルテの安全性・信頼性をチェックする診断ツールを作成する、ことを通して、電子カルテのシステム監査手法を確立する目標としている。 本研究は下記のとおり、事例の収集、分析、モデルの構築、監査手法の構築の順に行った。 1)電子カルテのシステム障害事例の収集、およびそのリスク分析 2)電子カルテに関連した診療行為のインシデント、アクシデントの収集、およびそのリスク分析 3)リスク分析に基づく、電子カルテの安全性・信頼性の自動診断ツールの作成 上記の4項目のうち、平成16年度には、1、および2の事例の収集、分析、および3の安全性・信頼性要求モデルの構築を行った。平成17年度は、平成16年度に構築した要求モデルに基づいて、神戸大学病院の病院情報管理システムを実例として、電子カルテの安全性・信頼性の自動診断ツールのプロトタイプをMicrosoft. Net Visual Studio 2005 C#を用いて作成し、試用し、その有用性を確認した。
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