研究概要 |
本研究では、現在実用化されている電子走査超音波診断装置において対象とする生体の局所の音波物性を計測して臨床上有用な二次元情報として表示することを目指している。 本研究着手にあたり既に共同研究で実施した心筋梗塞モデルラットを用いた実験において,梗塞心筋で音速が早くなることを確認していた。この事実を定量的に確認するための,摘出サンプル断面における音速の2次元分布が計測できる実験装置、即ち生体内局所音速計測がoff-lineでいろいろなアプローチで可能な実験装置のシステムを検討して、試作に着手した。以下試作装置の概要を記す。 1)透過法および反射法の双方による測定が可能, 2)超音波周波数:3.5〜10MHzパルス波, 3)探触子(送波と受波):128素子(最大)のPhased Array, 4)探触子(送波)半球面仮想点音源,PCによるディジタル機械走査が可能, 5)受波信号処理:最高サンプリング周波数200MHz,14ビットAD変換器からのデータをPCで処理。 試作した実験装置の性能を定量的に評価するためには、音波物性の再現性と経時変化において優れた特性を有するファントムを必要とする。かかる課題を解決するため、ファントムを構成する生体疑似物質とその構造についての研究を実施した。生体疑似物質材料として、従来から用いられていた天然素材である寒天に代わり、作成時の再現性と腐敗等による経年変化のない工業材料であるオイルゲルあるいはポリウレタンゲルを採り上げた。これらの音波物性の測定から、それらの有用性が確認できた。
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