研究概要 |
平成16年度に生体内局所音速分布測定装置の基本設計と主要部の試作が完了した。この装置における送受波回路と超音波トランスデュサの特性は,目的とする実験データの顕著な影響を与えるため,今回従来技術による当該部分の特性を飛躍的に向上させるために,それらの設計思想まで見直して対策を講じた。 特にアレー型超音波トランスデュサにおいて,音波物性が異方性を呈する一方向性炭素繊維複合材を音響整合層の超音波伝搬材料に適用して,隣接する素子間のクロストークを減少させた。従来の方式のトランスデュサにおいては,隣接する素子間で-6dB程度の超音波信号の漏洩が生じるが,この新しい方法により,この素子間の漏洩を-26dB以下にすることができた。このような計測の基盤技術の向上により,実験装置で得られる結果について,定量的な考察が可能となった。また,超音波トランスデュサの広帯域化を図るための方法として,そのバッキング材にタングステン粉末を混入した一方向性炭素繊維複合材を提案した。その効果は、実験により検証できた。 生体内局所音速分布測定装置の性能を定量的に評価するためのファントムを実現するため,生体に近似した音速,音響インピーダンスおよび減衰定数で且つそれらが経時変化しない工業材料について検討してきた。このよう要求仕様を満たす材料として,ポリウレタンゲルをとりあげた。この材料の分子構造と音波物性についての実験結果から,必要な案件を満足する材料が確認できた。 以上,実験装置で必要とする性能についての基盤技術を創出し,その効果を実験で確認できた。これら成果は,国内外で発表した。また,産業界で有用な技術については,特許を申請した。 当初の計画に基づいて製作した実験装置と実験計画を逐次実施して,この装置の動作確認を行った。 今後,さらに生体試料の実験データを集積して,新しい知見を得るための研究を行う予定である。
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