研究課題/領域番号 |
16500324
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研究機関 | 明治大学 |
研究代表者 |
平岡 和佳子 明治大学, 理工学部, 助教授 (00212168)
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研究分担者 |
崔 博坤 明治大学, 理工学部, 教授 (30143530)
近藤 隆 富山医科薬科大学, 医学部, 教授 (40143937)
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キーワード | 超音波療法 / 皮膚整理 / ホメオスタシス / メラノーマ / 培養細胞 / チロシナーゼ / メラニン / ラジカルスカベンジャー |
研究概要 |
皮膚生理ホメオスタシスは皮下組織構造の正常な維持と皮下分裂細胞の正常なターンオーバーによって維持されているが、紫外線などの皮膚への物理的刺激や皮膚環境の変化は、これらの皮膚生理を乱し、皮下組織にダメージを与える。本研究は、メラニン形成を指標として皮膚恒常性の維持に寄与する超音波療法を開発することを目的とし、装置の作成、評価をおこなった。 1.周波数可変型超音波発生装置の作成: PZT素子をとりつけた水槽型照射容器に、増幅器(IWATSU, SG-4105)・アンプ(NFHSA4101)を接続することにより、1〜7MHzに共振を持つ照射装置が得られた。 2.高周波超音波の細胞への影響:作成した装置の安全性を見積もるために、培養細胞の増殖能に対する超音波の影響を調べた。ヒト胸膜浸出液より取り出したヒト組織球性リンパ腫細胞であるU937細胞を無菌的に超音波照射し、印加電圧と、照射時間の違いによる細胞の増殖能を比較検討した。以上から、細胞死を指標としたときの、治療における安全限界線量を算出することが可能となり、1〜3MHzの照射における治療の際の危険性と効力を、あわせて評価することが可能となった。 3.超音波によるチロシナーゼ酵素の不活性化:メラニン生成に関わるチロシナーゼ酵素活性に対する超音波の照射効果を検討した。1MHzの超音波を照射すると、強度に比例して、チロシナーゼ触媒反応に抑制効果が現れることを明らかとした。 4.チロシナーゼ不活化における活性酸素の効果: OH・のスカベンジャーであるD(-)マンニトールを用いた実験では、OH・は超音波照射によってもたらされるチロシナーゼ活性低下の主たる原因ではない事を明らかとした。 結論:高周波の超音波照射によるメラニン形成酵素の不活性化における超音波周波数と超音波強度の作用スペクトルは、実際の治療における線量効果と安全性の両面において、周波数および強度の選択に重要な情報である。高周波超音波を用いた皮膚治療の安全性と効力の総合的な基礎データとして有用性が高いと考えられる。今後、本研究結果を発展させ、実際の治療に使用可能な装置の開発と、治療法の確立を目指していく予定である。
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