"超音波照射による生体内温度上昇の計測ならびに温度上昇の推定"に関して以下に示す研究項目につき研究した。 (A)ファントム内の温度計測 寒天粉末に砂糖やグラファイトを適量混入する方法で、生体軟部組織に音響特性が似た均質なファントムを製作した。恒温水槽中に設置したファントムに、周波数が1〜2MHz、音響強度が0.2〜2.5[W/cm^2]の連続超音波を20分間照射した。照射開始時からファントム内の温度変化を微小熱電対を用いて、複数点で同時計測した。このことから、均質ファントム中の温度上昇に関する知見を得た。 (B)生体内温度上昇推定法の開発 超音波照射による温度上昇を推定するために、生体軟部組織ファントム内の温度上昇を推定するプログラムの開発を行った。この際、3次元計算を短時間で行うための並列計算処理のプログラム研究も行った。すなわち、時間領域差分法(以下FDTD法)を用いて正確なファントム内の音場計算を行い、これから予想される超音波照射による発生熱量を算出した。この熱量を熱伝達方程式に代入し、熱拡散・熱伝搬・熱減衰の効果を勘案して、生体内の温度分布を推測できる生体内温度上昇推定法を開発した。数値解析の結果、2次元解析ではファントムを用いた実測値と誤差が生ずること、あるいは、3次元計算ではより実測値に近いことを見出した。さらに、骨に近接した軟部組織中では、骨との境界面での音波反射の現象に起因して、骨直前での温度上昇が激しいことを推定することができた。
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