本研究においては超音波モータの位置決め精度の向上を図るため、まず従来の制御回路の改良を行った。論理回路のすべてをCPLD (Complex Programmable Logic Device)に置き換えることにより、位相差制御の分解能の向上(従来の2倍)、信頼性の向上および小型化を実現させた。この制御回路を超音波モータに用いることにより、PID制御器においては±0.0045(deg.)、PID-NN制御器(ニューラルネットワーク併用型PID制御器)では±0.0011(deg.)の精度で位置決めを行うことができた。この値は従来の精度を3.2倍上回る値である。この結果より手術ロボット用のアクチュエータとして、超音波モータは十分な制御性能を得られることが確認された。 次に手術支援ロボットの試作を行った。6軸による構成とし、各軸はx、y、z軸方向のスライダ、ロボットアームの右左回転、上下回転および伸縮である。構成材料は主にアルミを用いて構成を行った。この試作のロボットを検査用MRIに持ち込んで、画像に与える影響について調べた。画像は頭部を想定してヘッドコイルからの画像として、中心部にファントムをおいた。画像を取得している間は、超音波モータを一軸のみ往復運動をさせた。その結果、ヘッドコイルから約30センチ以上離すと画像への影響はほとんどないことが確認された。 今後は更にロボットを近接させても画像に影響を与えないように、構成部品のすべてを非金属製のアクリルやセラミックに材料を変更する予定である。また、超音波モータに直結されているエンコーダにおいては、構成部品として部分的にステンレスが使用されている。この部分も光ファイバーを用いるなどして、ロボット全体を非金属化にする予定である。
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