連続経頭蓋磁気刺激(rTMS)は、中枢性神経疾患やうつ病などの難治性疾患に対する臨床応用の検討が数多くの検討がなされている。今回、パーキンソン病を対象としてrTMS投与部位による影響について検討した。 平成16年度では、13名のパーキンソン病を対象(男性3名、女性10名、平均年齢69.2±6.2歳)とし、8の字コイルを用いて低頻度rTMSを行った。rTMS投与部位は(1)前頭前野背外側部、(2)補足運動野、(3)運動前野、(4)第一次運動野の4箇所で、各々0.3Hz、50回のrTMSを投与した。rTMS前後において、短母指外転近(APB)のcortical mappingを測定し、APBのMEPの振幅の総和について比較した。結果は、(1)へのrTMS投与後においてのみ、APBのMEPの振幅は高くなり、MEPのareaは拡大する傾向がみられた。パーキンソン病に関しては、前頭前野背外側部への低頻度rTMSは大脳皮質の興奮性が増強する可能性が推測された。 平成17年度では、9名のパーキンソン病患者を対象とし、高頻度rTMSの投与部位による影響を測定した。rTMSは10Hzの刺激頻度で総計1000回施行し、投与部位は左第一次運動野、左前頭前野背外側部の2種類とシャム刺激の3パターンについて検討した。rTMS投与前後において、運動機能(歩行・握力等)および前頭葉機能(stroop test)への影響について検討した。前頭前野背外側部刺激では、stroop test II-I時間の短縮傾向がみられた。左前頭前野背外側部への高頻度rTMSは、前頭葉機能に影響を与える可能性がある。高頻度rTMSの投与部位や刺激条件を検討する必要はあるが、前頭葉機能に対する臨床応用の可能性が推測された。
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