研究概要 |
長期臥床による廃用性骨萎縮は軽微な外力での骨折の原因となる。本研究では、この骨萎縮の発症のメカニズム解明と予防を目的として、骨代謝で重要な骨芽細胞を用いてin vitro実験を行った。力学的負荷の変動、機械的ストレスとシグナル伝達において、ストレス性の応答が、最終的に廃用性骨萎縮の発症へとつながるという仮定で、この過程に深く関与する遺伝子発現を強制的に抑制してやれば、予防することができる、というシナリオである。まず非加重により、Gタンパクレセプター(PTHやPAF、サイトカインレセプター)に由来するPLCβ誘導を介したRasの活性化およびその後のMAPKカスケードの動員、またGタンパクレセプター以外の経路として、細胞内タンパクのチロシンリン酸化によるPLCγ誘導を介したRasの活性化を発見した(Kumei, Morita et al., 2005,2006)。このチロシリン酸化の基質として骨成長因子IGF-Iの細胞表面レセプターのアダプター分子であるIRS-1が最も重要な役割を果たす。さらに宇宙航空研究開発機構の筑波宇宙センター内にある重力環境制御付き人工気象室内で、重力加速度のベクトル方向を人為的にゼロにした状態、すなわち非荷重状態で正常なMC3T3-E1マウス骨芽細胞株を培養した。実験終了後細胞から回収したRNAを用いてReal Time RT-PCR(逆転写-ポリメラーゼ鎖増幅反応)による定量的解析を行った。機械的ストレス応答分子としてNO合成酵素、破骨細胞誘導因子としてRANKLとOsteoprotegerin、骨形質発現分子としてOsteocalcinとビタミンDレセプターの遺伝子発現を調べた。しかしラットとマウス、骨芽細胞の分化程度で感受性の差があることがわかり(Kumei, Morita et al., 2005)、現在再実験中である。
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