研究概要 |
義足の良否は,ソケット形状ならびにアライメントの適合性の両者により決定される.例えば,義足ソケットの適合性が良好でない場合,切断端で瘡を生じ易く,車椅子の併用を強いられるケースも報告されている.このため,義足ソケットの最適形状を得ることは,義足使用者のQOL向上の点で極めて重要な問題である. 義足ソケットの製作にあたり,熟練した義肢装具士であってもいまだ解決困難な問題が少なくない.すなわち,義肢装具士の経験と勘を頼りにしている部分が多くある一方で,定量的かつ一定以上の製作技術レベルで対応することが求められている.例えば,歩行等の生活状況を考慮し,人体の内部組織に作用する応力や変形ならびに血流等を予測可能となれば,良好な適合状態を保証する義足ソケット形状を決定する上で極めて有効である. 近年,レーザ側長およびCAD/CAMを利用して切断端近傍の外部形状を計測し,義足ソケットの製作を行う手法も提案されている.しかしながら,体重支持や歩行動作に適した義足ソケットの最適形状を得るためには,切断端近傍の外部形状だけでなく骨断端形状ならびに軟部組織形状を測定した上で,日常生活で作用する力を考慮した応力解析を行うことにより,より実生活に即した義足ソケットが得られるものと考えられる. そこで本研究では,外部形状のみならず骨等の内部組織形状を同時に計測しうる超音波を利用し,モデルボーンおよびシリコン樹脂からなる下腿切断端モデルを測定対象として測定を行った結果, (1)超音波3次元形状計測システムを用いることで,切断端のような複雑形状物体を計測可能であることが示された. (2)超音波による計測位置と予め3次元測定機で計測した位置が必ずしも一致しないことから,計測制度に関する検討については、超音波計測結果を補間し,検討する必要がある. 等の知見を得た.
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