人が集まる場所での公共放送用拡声装置として、情報弱者である補聴器を使用しない軽・中度難聴者の聞き取りを改善するための聴取補助機能を有する装置の開発を目指している。平成16年度は、健聴者に違和感を与えず、軽・中度難聴者の聞き取りを改善することが可能であることを確認するための研究と、実時間処理装置の試作を行った。その具体的内容は以下の通りである。 1.小さな音ほど増幅率を高めることが可能な、音圧帯域圧伸法を適用した聴取補助装置の複数のパラメータを組み合わせて処理した音源を作成し、下記の方法で最適条件を検討した。 2.軽・中度難聴者の聴取改善効果を定量的に調べるため、その試験方法を検討し、試聴実験を繰り返してその最適化を行った。軽・中度難聴者の協力を得ることが困難だったので、振幅帯域を伸長して模擬難聴処理を行い、健聴者が試聴試験をした。その結果、語音弁別精度61%の難聴状態が、聴取補助を行うことで最高97%まで改善できることを確認した。 3.聴取補助処理は自然な音を加工するため、処理の程度を上げると健聴者に違和感を与える。健聴者による試聴試験の方法を検討し、その結果に基づいて評価試験を行い、違和感を与えない処理の範囲を把握した。 4.音圧帯域圧伸法はデータ処理量が多いため、コンピュータによる一括処理を行ってデータを作成し、試聴試験に用いている。デジタル信号処理(DSP)ボードを使った実時間処理装置を試作し、そのソフトウエアを開発した。現在は、実時間処理ができていることを確認した段階である。
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