研究概要 |
挫滅損傷を与えたマウスの坐骨神経に電気刺激や磁気刺激を与え,再生神経の形態を観察すると,これらの刺激によって神経再生率がやや高まり,再生神経の成熟が促進することが明らかになった。しかし,刺激が強すぎると神経再生に悪影響を及ぼすことも明らかになった。また,損傷2日後だけに刺激を与えた群と,2日以降毎日刺激を与えた群で比較すると,損傷2日後だけ与えた群では損傷後28日ではほぼ正常群と同じ程度に神経が再生しているのに対して,毎日与えた群では神経再生率と成熟度が優位に悪いことも明らかになった。これに関しては現在論文作成中である。磁気刺激や電気刺激が条件によって神経再生を促進ことが明らになったのを受け,そのメカニズムを調べるために,損傷部付近における神経成長因子の発現と,これに及ぼす影響を免疫組織化学的に観察した。正常のマウス坐骨神経では神経成長因子の免疫反応は非常に弱いが,挫滅損傷を与えると損傷部付近に免疫反応が見られるようになり,これに磁気刺激を与えると,免疫反応が増強していた。電子顕微鏡による観察では,免疫反応は損傷部付近のシュワン細胞や線維芽細胞の細胞質,シュワン細胞の基底膜に明瞭な免疫反応が見られ,また再生軸索の軸索膜や軸索内小胞に沿って免疫反応が観察された。神経成長因子はin vitroにおいて神経再生を促進することが知られており,これも磁気刺激が神経再生を促進する1つの要因であることが示唆された。さらにこのメカニズムを確かめるために,現在線維芽細胞成長因子についても免疫組織化学的に観察を続けている。 これらの実験と平行して,除神経された骨格筋においてパルス磁気刺激や関節可動域運動の速さの違いが廃用性萎縮に及ぼす影響を形態学的に観察しており,これらが筋線維の萎縮や幼弱化を軽減していることも明らかになった。これらについては現在論文作成中である。
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