研究概要 |
廃用性萎縮筋における筋線維の細小化、短縮ならびに筋内膜のコラーゲン線維網の変化等がみられることを報告してきたが、今回の研究で、萎縮筋内では、拘縮後比較的早期にMT1-MMPの活性化に伴い、MMP-2が活性化されることを証明し、それによって筋線維の退行性変化が起きることが推定された。 さらに、MMPsの活性化に関連する因子として、サイトカイン、シクロオキシゲナーゼ2(COX-2)、プロスタグランディンE2(PGE2)等の発現について検討した。 廃用性萎縮筋におけるインターロイキン1β(IL-1β)、腫瘍壊死因子α(TNFα)の産生についてELISA法により測定した。コントロール、拘縮2週後、拘縮4週後におけるIL-1βの産生はそれぞれ、220,2±28.9pg/ml、376.5±153.8pg/ml、346.3±190.6pg/mlと拘縮2週後、拘縮4週後に高い傾向にあった。TNFαの産生は、それぞれ11.9±7.8pg/ml、9.6±5.7pg/ml、3.6±2.8pg/mlと、いずれの群においても産生の増加は認められなかった。 COX-2の発現、PGE2の産生については有意差は認められなかった。iNOSについても、一定の傾向を見出すことができなかった。 以上の結果から、廃用性萎縮筋におけるMT1-MMP、MMP-2の活性化に、筋組織内のIL-1β濃度の増加が関与している可能性が示唆された。また、筋組織においては、筋線維内のタンパク分解酵素の活性化によって傷害される経路も確認されているが、萎縮筋におけるMMP-2の発現は筋周膜に局在しているので、MMP-2による筋周囲のコラーゲンの分解によって筋周囲からの栄養補給が遮断され、筋線維が傷害される経路も存在する可能性が示唆された。
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