研究概要 |
本研究では高齢者を対象とし,運動機能を引き出す「アシスト型手すり」の開発を目的とした.なお本研究で想定する使用者は,運動機能低下により,ベッド,椅子からの立ち上がりに障害を感じるものであり,人的な介護なしでは立ち上がることが困難な者とした. 製作した装置は直動型アクチュエータ,手すり,制御用PC及びフレームで構成した.高齢者の立ち上がり動作を参考に,各軸のストロークは650[mm],最大移動速度は250[mm/s],最大可搬質量を50[kg]とした.木製の長さ300[mm]の肘置き型の手すりがZ軸のスライダに取り付け,X軸及びZ軸を協調して動作させることで,手すりをXZ平面の任意の位置に移動することができる設計とした.さらに,手すり部に6軸力覚センサを装着し,手すりに対する負荷が制御用PCにフィードバックされる設計とした. 利用者の起立動作と手すりの移動軌跡について分析を重ね,試作した制御プログラムにより健常成人による手すり動作実験を行った.この結果手すりを起立動作に同期させ移動させた場合上下肢の伸展筋活動負担を軽減させることが示された. さらにパーキンソン患者を対象として,本手すりが有効に機能するか臨床試験を行った.分析対象はパーキンソン病群8名とした.手すりの移動軌跡は単に体重心の上方移動を助けるのではなく,人の自然な起立動作,つまり上体を前方へ屈曲することにより重心を一旦前方へ移動させ,この後上方へ立ち上がるという一連の動作を誘導することを目的としてプログラムを作成した. 実験の結果,被験者8名中2名において,前方への重心移動を促す「アシスト型手すり」は起立動作を助け,動作を可能とすることが示された. この結果起立動作に困難を感じ,日常的に介助を必要とする患者において,本手すり利用によって独力で起立可能となる得ることが示された.
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