本研究では、筋萎縮性側索硬化症(ALS)などの障害者のための代替コミュニケーションツールとして、目の位置情報と瞬きをマウス機能に対応させた非接触型の入力装置を開発した。また、LANおよび電話回線を利用して、1台の介護者用サーバPCと複数台の障害者用クライアントPCで構成される遠隔介護支援システムを開発した。以下に研究成果の概要を示す。 1.瞬きを用いた非接触型入力装置の開発 平成16年度は、CCDカメラで撮影した顔画像より目の位置を検出し、検出した目の位置をマウスカーソルの位置に対応させ、クリックおよびダブルクリックを瞬きの回数で実行する非接触型入力装置を開発した。また、重度障害者のための入力装置としてはクリック機能だけで十分な場合が想定されるため、クリックを目の停留で実行する停留型クリックのみを備えた非接触型目入力装置も開発した。平成17年度は、瞬きによる非接触型入力装置のクリックおよびダブルクリックの操作性を評価するために、健常者を被験者としてディスプレイ上に配置した数箇所のボタンをクリックおよびダブルクリックしてもらう実験を行った。クリックおよびダブルクリックに要する時間は、被験者やボタンの位置に対して差が見られず、利用者によらず安定に換作できることが示された。 2.遠隔介護支援システムのユーザビリティ評価 遠隔介護支援システムは、障害者が目入力装置を用いて換作するクライアントアプリケーションと介護士や看護士が操作するサーバアプリケーションから構成されている。平成16年度は、要求項目をウインドウ上に表示されたボタンをクリックすることで選択する直接選択方式のクライアントアプリケーションと複数のクライアントに対応したサーバアプリケーションを開発した。平成17年度は、ALS患者(40代男性)に停留型クリック方式の入力装置を用いて直接選択方式のクライアントアプリケーションを操作してもらい、ユーザビリティ評価を行った。その結果、換作可能なスペースが制限されることが明らかになった。この評価結果をもとに、多くの要求内容を限られた操作スペースに表示するため、要求内容を階層構造にした走査選択方式による階層分岐型アプリケーションソフトを開発した。
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