研究概要 |
1.コンピュータに蓄積された障害物情報から,必要なセンシング能力(検知方向,検知範囲など)を備えた「センサ」をコンピュータの内部に構築するという概念を提案し,「仮想センサ」と称した。この仮想センサを電動車椅子実機に搭載して走行実験を実施し,その有効性を確認した. 2.本研究では,障害物検知の主センサとしてPSDセンサを利用しているが,その障害物検出距離は1mである.PSDセンサの検知範囲外の障害物に対処するために,超音波センサの利用を試みた.超音波センサの指向性が広すぎる場合,障害物の位置特定が困難になる.そこで,指向性を望ましい状態に調整する方法を示した.指向性を調節した超音波センサを,「遠方の障害物に関しては減速動作」,「車椅子の近傍の障害物に関してはPSDセンサとの併用による障害物回避」に使用し,その有効性を示した. 3.障害物回避機能はニューラルネットワークによって実現している.このニューラルネットワークの結合荷重(ニューラルネットワークの機能と特性を決定する値)を環境の変動に対応して変化させれば,環境が変動しても,高い障害物回避能力を維持できることを示した.また,このニューラルネットワークは操作者の誤操作に対しても優れた障害物回避能力を備えていることを示した. これらの成果は次のようにして,操作者の意思を必要以上に制御することのない操作支援に寄与する: 1.早期からの車椅子の減速により,操作者に障害物の接近を知らせ,自らの意思での障害物回避を促すことができる.また,急激な障害物回避を行うことなく障害物との衝突を回避できる. 2.障害物検知機能および障害物回避機能の向上により,操作者の操作指令を障害物回避指令で補正する場合に,必要以上に早くから回避しなくても,障害物との衝突の危険性が大きくなってから操作の支援を行えばよい.
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