研究概要 |
本研究では,電動車椅子の周囲の障害物の検出に指向性の強いPSDセンサを用いた.PSDセンサを用いたセンシングシステムには死角が存在するが,障害物の位置を特定できる.「電動車椅子の移動情報」と「PSDセンサによる障害物情報」から,PSDセンサの死角の障害物情報を導出できる.本研究では,死角のないセンシングシステム構築手法として,「仮想センサ」と称する手法を開発した.さらに,障害物回避指令生成機構に障害物情報を供給できるセンシングシステムを仮想的に構築し,より安全に電動車椅子走行を支援した.このように「仮想センサ」という概念は,情報の用途に合わせて仮想的センシングシステムを自由に構築することができる. 障害物が電動車椅子の進行方向に存在し,走行速度が大きく,電動車椅子と障害物の距離が短いときに衝突の危険性が大きい.したがって,電動車椅子の進行方向,走行速度,障害物との距離によって,衝突の危険性が定量化できる.本研究では,このようにして定量化された衝突の危険性に応じて障害物回避機能を調節した.すなわち,衝突の危険性が高いときは,障害物回避機能によって操作指令を補正し障害物を回避する.一方,たとえ障害物が電動車椅子に近くても,操作指令が適切で衝突の危険性が小さいときは,操作指令にしたがって電動車椅子を走行させる.このような操作支援の必要度を決定するパラメータを「支援度」と称した.本研究では,最も危険な障害物との衝突の危険性によって支援度を算出する手法を新しく提案した.障害物を見失ってしまうと,改良した支援度は有効に機能しない.したがって,「仮想センサ」によって障害物を見失わないことが不可欠となる. 本研究では,障害物検知センサおよび電動車椅子移動量検出センサの観測誤差の影響を克服して,「仮想センサ」および「支援度」を実機に実装し,その実用性および有効性を実機走行実験によって示した.
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