今年度の研究では、国際医療福祉病院および附属老人保健施設に入院・入所中の高齢者12名に、3回/週以上、約3ヶ月間継続して運動療法を実施した。運動療法には自転車エルゴメーターを使用し、定量負荷をかける形で実施した。運動強度は目標心拍数=安静時心拍数+(年齢-220)-安静時心拍数x0.3とし、運動時間は30分以上とした。その結果、同一負荷に対する心拍数の増加が10名で抑制され、運動療法効果が得られたと考えられた。しかし、高齢者では筋力の増加は認められなかった。 一方、40-60歳の8名で目標心拍数=安静時心拍数+(年齢-220)-安静時心拍数x0.4の運動療法を継続した結果、同一負荷に対する心拍数の増加が抑制され、筋力増加も5名で認められた。 これらの成績から、これまで運動強度として提唱されてきた嫌気性代謝閾値より低い運動強度での運動療法継続でも、健康増進に十分貢献する可能性が示唆された。 このような低強度での運動療法継続は、呼吸機能障害を有する患者でも有用であると考えられ、その予備的な研究をかねて、胸部外科手術後の患者の肺機能変化についても検討を行った。手術後に理学療法を施行することで、肺機能の回復が促進することを確認できたが、退院後に対象者は必ずしも運動療法を継続できなかったため、運動療法の継続効果を確認できていない。この点については、今後、肺機能の推移と共に検討したいと考えている。 健常者では、嫌気性代謝閾値レベルでの運動負荷時に、血液中の乳酸をはじめとする物質がどのような時間経過で変化するかについて検討した。特に、野菜ジュースを摂取することが乳酸産制抑制に働く可能性が示唆される報告があることから、リコピンやカルチノイドなどの変化を追跡しているが、まだ特定の結論を出せるような成績は得られていない。 次年度は、これらの研究をさらに症例数をふやして検討する予定である。
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