【目的】立位および座位で、上肢の随意運動による外乱を起こし、その際の姿勢調節に関する脳の活動を運動関連脳電位(movement-related cortical potentials : MRCPs)を用いて検討する。 【対象および方法】健常成人3名を対象とした。右上肢を挙上し、右手関節背屈位から同関節を屈曲することで壁を押し、自己による外乱を与える。その際転倒しないように姿勢を保持することを課題とした。両脚立位、片脚立位、不安定な板の上での立位、座位(背もたれあり)、座位(背もたれなし)の諸条件におけるMRCPsを測定するための環境設定を行った。体動を伴うため、安定した脳波を得るための環境設定に苦労したが、日本光電株式会社製ペーパレスデジタル脳波計Neuropfaxμ EEG-9100を使用した脳波の測定環境を整えた。外乱を右手関節屈曲による動作で引き起こしたため、右尺側手根屈筋の筋電図をトリガーとし、3-10秒間隔の自己ペースで課題運動を行わせた。MRCPsは約50回の課題施行後、自家製プログラムによるoff-line分析での加算方法(運動開始前1500msec.から後500msec.)を用いて評価した。 【結果】CzにおけるMRCPsは立位の安定性が高いほど、運動への準備を表すと言われているBereitshaftspotential、negative slopeが明瞭に認められた。また、座位においては明らかな運動前成分は認めなかった。 【考察】今回運動時でも脳波を測定できる環境設定を行うことができた。得られたMRCPsは、姿勢によって変化を示すため、主に姿勢の調節にかかわる下肢や体幹筋を支配する一次運動野の興奮を反映しているものと考えられた。このMRCPsの特徴を分析することにより、姿勢調節における脳活動の特徴を把握することが可能と考えられ、転倒予防に対する脳の活動を探る一助になると思われた。
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