健常者を被検者として下肢や体幹の予測的姿勢調節に対応する脳の活動を運動関連脳電位(MRCPs)で評価した。 立位で上肢を動かす時、上肢動作による重心移動がおこる。この移動を予測して下肢や体幹の筋肉は上肢動作前に活動を始めるため、我々は転倒せずに物を取れる。この下肢や体幹筋の活動が予測的姿勢調節と呼ばれる現症で、我々は意識せずともこの調節でバランスを保っている。外乱を加える前の状態を変えてMRCPsを測定し、準備電位の程度を比較検討した。 上肢動作による外乱の前1500msecから後500msecまでの脳波を評価に用いた。両脚立ち、片脚立ち、不安定板上での立位、座位(背もたれあり、なし)のように最初の姿勢条件を変化させてMRCPsを測定した。16年度は上肢の動作時に脳波に混入するノイズをとる工夫を行った。17年度は健常者5名を対象として測定し分析した。 結果:計測部位での比較では、運動準備の状態を表す脳波であるBereitshaftspotential(BP)やmotor potentials(MP)の振幅はCzで最大であり、次いでC3となっていた。Czで測定したMPマイナスBPで求めた陰性電位の程度を各条件で比較すると、安定した姿勢である両足立ち、および座位で両者の差が大きく、不安定な姿勢である片足立ちや不安定板上での立位ではこの差は明らかではなかった。今回得られたMRCPsは、姿勢調節に関する条件変化に応じた反応を見せており、姿勢が安定している場合ほど陰性電位の変化が大きかった。下肢や体幹筋の予測的姿勢調節は安定な姿勢で認めることより、これらのMRCPsは予測的姿勢調節に対応する皮質活動を捉えている可能性が示唆された。条件の違いによるMRCPs出現のタイミングや、陰性電位の程度などをさらに詳細に検討することで、姿勢制御に関わる大脳皮質活動の特徴を把握し、転倒予防や訓練効果の評価に応用可能と考えられた。
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