市販されている階段昇降機の駆動方法の欠点(騒音、振動、潤滑油問題)を低減させる方法としてわれわれは擬似サイクロイド歯車とピンローラを用いたクロール型移動機構を提案してきた。ここで擬似の意味は、歯形の設計においてサイクロイドを基線としつつも、単純なサイクロイドではないからである。 日本の多くの家屋の階段は狭いゆえに折り返し階段となっている。今年度、この階段の壁面にそって階段の形状にあわせた階段昇降機の設計試作を行った。設計の基本は回転円盤の周縁部に等間隔に設置されたローラの中心軌跡が移動にともなって連続となること、そのため回転円盤の中心軌跡の1次微分が連続となるようにすることである。階段壁面には金属パイプから構成される上下2本の走行ガイドとその間に駆動ガイドが取り付けられる。階段を利用する健常者の安全のため、駆動ガイドは走行ガイドより壁面に近く設置されねばならない。さらに安全性を高めるために駆動ガイドの歯は下向きとした。汎用性を維持しつつ設計を簡単にするため、今回は直線部と曲線部の傾斜角を同一とした。 直線部の駆動ガイドは運動面が2次元であるため簡単である。曲線部(軌道は螺旋)の駆動ガイドは3次元となるため解析は困難であり、さらに加工と取付けを考慮した設計をしなければならない。この部分の設計が本方式を実用化し商品化するための本システム最大のブレークスルーである。われわれの解は猿の腰掛形状の不連続な駆動ガイドの採用である。 移動本体の走行安定性を高めるために、走行ローラは走行ガイドを上下から4個のローラで挟むタイプとした。そのため、直線部から曲線部に移る最後の直線歯と、曲線部から直線部に移る最後の曲線駆動ガイドの一部を修正しなければならない。試作後走行可能であることを確認した。次年度は曲線部の駆動ガイドの取り付け方の更なる工夫と走行の安定を図る。
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