研究概要 |
遂行機能障害61名に対し評価および訓練を一定のシステムに従って施行した。原因疾患は脳血管障害および外傷性脳損傷が多くを占めた。遂行機能障害のほかに注意および記憶の障害を示していた。訓練当初は注意および記憶の訓練が行われ、その後に遂行機能の訓練が行われていた。遂行機能の訓練では日常生活技能訓練が最も多く、次いで直接遂行訓練、問題解決訓練の順であった。訓練法の適応について、注意および記憶の機能改善が前提になり、家庭生活への復帰準備として多くの対象者に日常生活技能訓練が行われ、職業復帰が目指される場合に直接遂行訓練および問題解決訓練が行われていた。従って後2者の訓練は注意、記憶を含め認知機能の水準が比較的高かった。訓練前後の評価では注意、記憶、見当識、病識、自発性に改善が認められた。検査では言語性記憶、遅延再生、遂行機能検査および動作性知能に有意な改善が得られ、顕著な低下を示す機能に改善が大きかった。また、集団訓練法(石田、種村,2006)、携帯情報端末を用いた日常生活技能訓練プログラム、コミュニケーション訓練プログラム(種村,2005、種村、椿原,2006)、二重課題を用いた遂行機能評価法(津守,2006)の開発を行った。 遂行機能障害を評価する検査法として昨年度にわれわれが開発したIowa Gambling Taskのコンピューター版(Fukui et al.,2005)、および社会認知能力を評価する各種神経心理検査を、10名前後の前頭葉損傷患者に施行し、脳損傷部位、神経心理学的検査結果、実生活での社会行動障害の関連について検討した(Yamada,2005)。また、前頭葉損傷に伴う行動変化を評価する質問紙Frontal Systems Behavior Scaleの日本語版の標準化を終え(吉住,2005)、前頭葉損傷患者の実生活場面での行動障害の定量的な評価尺度として使用を開始している。
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