研究概要 |
本研究は、ラット脳虚血モデルにおいて、障害部位の神経活動を賦活し、その組織の代謝、血流反応、機能回復の相関性が、虚血後どのように変化していくかを、電気生理学的シグナルと内因性光シグナルとを同時計測し、ヒト脳卒中後の病態と機能再構築過程の生理学的基盤を明らかにしようとするものである。本年度は、基本技術となる、両シグナルの同時計測とデータの分析、及びそれらのautomation化の確立に主眼をおいた。CCDカメラ(Orca ER)をSimple PCI(C-imaging,Compix-浜ホト)にて動作させ、刺激パルスはMaster 8(AMPI)で発生させた。四肢末梢及び、対側大脳皮質を刺激し、血液量と血液酸素化度を反映する内因性光シグナル(586,605nm)により賦活領域をmapping、さらに同部に微小電極を挿入し、field potentialも同時測定した。各試行毎に刺激パターンや強度を変更し(最大6種類)、各装置が長時間同期して、自動的にシグナルを取得できるような実験系を確立した。また、内因性光シグナルの描出と分析の為のMatLab programを作成した。これにより、病態モデルに対するコントロールとしてのneurovascular couplingを正確に評価できるようになった。虚血ラットへの応用は現在進行中であるが、初段階の正常モデルとして、左右大脳半球間での神経活動の相互作用について、特に刺激タイミングのずれで、相互作用がどのように変調するのかを検討した。結果は、対側の末梢干渉刺激を、標的刺激の約40ms前に入れると、標的刺激に対するfield potentialと内因性光シグナルの反応が最も強く抑制され、相互作用のある異なる部位の複数刺激にも、neurovascular couplingが保たれることが推測された。また、対側のhomologousな皮質領域の電気刺激では、約20msで反応抑制が最大となり、この時間差の由来を、下肢末梢から大脳皮質に到達するまでの時間差と考えると、末梢刺激の抑制が、脳梁を介して行われうること、あるいは、その解釈でも矛盾しないことを示唆していた。
|