研究概要 |
本研究は、ラット脳虚血モデルにおいて、障害部位の機能を賦活した時、その脳組織の代謝、血流反応、機能回復の相関性が、虚血後どのように変化していくかを、電気生理学的シグナルと内因性光シグナルとを同時計測し、ヒト脳卒中後の病態と機能再構築過程の生理学的基盤を明らかにしようとするものである。本年度は、両シグナルの同時計測とデータ取得の自動化,分析手法の確立、特に,電気生理学的シグナルをlocal field potentials(LFP<100Hz)とmulti-unit activity(MUA>300Hz)の周波数帯域に分離し,それぞれを局所のシナプス活動量とスパイク活動量の指標として、局所脳循環反応((血液量CBV及び酸素化度oxygenationを各々強く反映する586,605nmの内因性光シグナル)と比較できるシステムを構築した。現在,このシステム上で,α-chloraloseの麻酔下,Rose Bengal(20mg/ml,0.5ml)を静脈内投与,下肢体性感覚運動野への栄養動脈に,DPSS green laser(532nm)から得られたレーザー光を,光ファイバーと集光レンズを用いて導入照射し,photochemical thrombosis法による限局性の梗塞モデルを作製,病態下,急性期でのneurovascular couplingを検討している。これまでの成果については,正常生理学モデルでのneuro-vascular couplingに関するものであるが,その概要は以下のごとくである。1)複数の神経活動が,左右の大脳半球間や隣接皮質間で,時間的,空間的に重畳し、抑制的あるいは促進的に相互作用を及ぼし合う複合的賦活モデルにおいても,脳循環反応のうち,特に血液量の反応は,活動領域間の抑制や促進の相互作用を,良く反映する。2)神経活動に関しては,LFPとMUA共に脳循環反応と強い正の相関性を認めたが,相互抑制の強い刺激パラダイムについては,LFPの時間積分値と脳循環反応の相関性は低く,直流平滑化されたMUAの時間積分値,あるいは,その最大振幅値,LFPの負の最大振幅値が,脳循環反応を良く反映する。これらの内容は,主として日本生理学会にて発表した。
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