本研究の目的は、随意動作が極めて限られる重度運動障害者の意思表示システムの入力として交感神経反応に"随意性"をもたらす条件を見出すことである。そのため、随意動作でなく動作イメージの交感神経活動への効果を分析している。 健常者を被検者として、交感神経反応のhabituationの過程と動作イメージの効果を調べた。聴覚刺激に対する皮膚電位反応のhabituation後に同じ刺激に対して動作イメージを行わせると、皮膚電位反応のnegative peakの大きい波形の割合が増える傾向であった。 また、パーソナル・コンピュータを用いて文字あるいは数字を提示し、皮膚電位の変化によって文字を選択するシステムを作成した。健常者を被検者とした場合、ターゲット文字の提示に対し注意を向けるだけでは皮膚電位によるターゲットの選択率は20〜50%であった。非ターゲットが誤って選択されるエラー率は1〜8%であった。ターゲット文字提示に対し動作イメージを行わせると選択率は30〜80%、エラー率は4〜9%であり動作イメージの効果が認められた。皮膚電位のpositive peakよりもnegative peakの振幅を用いた方が、ターゲットの選択率とエラー率の差が大きく、選択の効率が高いと考えられた。 随意動作のほとんどできない筋萎縮性側索硬化症の患者について、聴覚刺激(トーンバースト)、パーソナル・コンピュータによるターゲット数字選択や問いかけなどに対する皮膚電位の変化を分析した。
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