本研究の目的は、随意動作が極めて限られる重度運動障害者の意思表示システムの入力として交感神経反応に"随意性"をもたらす条件を見出すことである。そのため、随意動作でなく動作イメージの交感神経活動への効果を分析した。 本年度は昨年度に引き続き、実用に近い形で皮膚電位反応を入力スイッチとして文字(数字)を選択する課題を行い、動作イメージとmental countの効果を調べた。動作イメージは実行を伴わないが、動作の準備と実行に関わる中枢過程が働くと仮定している。数字の提示は、パソコンの合成音声でランダム系列と昇順系列をもちいた。被験者は健常成人である。被験者は、あらかじめ設定したtarget数字の提示に反応して動作イメージあるいはmental countを行い、onlineで皮膚電位反応を検出した。Onlineでの皮膚電位反応検出においては10.0%がfalse positive、2.5%がfalse negativeであった。Offlineでの分析では、targetのhit rateは、ランダム系列-動作イメージの組み合わせでは25〜90%、ランダム系列-mental countでは10〜86%、昇順系列-動作イメージでは11〜67%、昇順系列-mental countでは0〜25%であった。いずれの系列でも動作イメージのほうがtargetに対して皮膚電位反応が出現しやすかった。定位反応に加え動作イメージ中に活動する中枢機構が皮膚電位反応に関与することが示唆され、皮膚電位反応など自律神経系の反応を利用する意思伝達システムにおいて動作イメージによって反応の随意性を高めることが可能であると考えられた。
|