研究概要 |
研究代表者らがすでに報告してきたヒトのvoluntary relaxationに関する研究をもとに,本研究では意図的なrelaxationをうまく利用することによって運動パフォーマンスの向上に利用できるのではないかと考え,そのパフォーマンス向上への応用の可能性を探ることを目的とした. 主働筋の意図的なrelaxationによって目的のパフォーマンスを向上させる可能性は次の2点に絞ルことができる. (1)relaxationを意図的に行うことによって,次の筋活動の際に多くのmotor unitを同時に活動させることができるのではないか(同期化することによる出力量の増大) (2)relaxation後に発現する筋放電を利用すれば随意反応を起こすよりも短い潜時で反応を開始することができるかもしれない. 昨年度は,relaxationがパフォーマンスの向上に寄与できる可能性を,発揮筋力の増大という面から検討を加えたが,今年度も引き続き発揮筋力の増大効果の観点から探るとともに,反応潜時の短縮化についても検討を加えた.上腕二頭筋及び三頭筋を被検筋として,肘関節屈曲力及び伸展力について検討した.実験方法は代表者らによる先行研究とほぼ同様であるが,動作課題として,一定筋力発揮状態から急激なrelaxation後,できるだけ大きな力をできるだけ素早く発揮するという動作を用いた.対照群として意図的なrelaxationを行わずに一定筋力発揮状態から最大筋力発揮を行う条件も設定した. 発揮筋力や単位時間当たりの筋放電量,反応潜時の分析などから検討を加えた結果,うまくrelaxationができると発揮筋力の増強は見られたが,relaxationが瞬時にできるか否かによってその効果が異なるようであった.さらに今後もrelaxationのパフォーマンスへの向上について検討を加える必要があると考えられた.
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