研究概要 |
研究代表者らが近年報告してきたヒトのvoluntary muscle relaxationに関する研究において,relaxation特有の筋放電反応パターンが発現することが明らかになってきた. それは一定の等尺性筋力を発揮した状態から急激なrelaxationを行うと,筋活動が一旦休止するが,その後まるでリバウンドしたかのような筋放電が発現することを見出した.本研究では,このような意図的なrelaxationによって生じる特有の筋活動を利用して筋力増大や反応潜時の短縮に利用できるのではないかと考え,意図的なrelaxationのパフォーマンス向上への応用の可能性を探ることを目的とした. 主働筋の意図的なrelaxationによって目的のパフォーマンスを向上させる可能性は次の2点に絞ることができる. (1)relaxationを意図的にタイミングよく行うことによって,主たる筋活動の際により多くのmotor unitをシンクロナイズして活動させることができるのではないか (2)relaxation直後に発現する筋放電を随意筋活動に利用すれば,いわゆる反応時間よりも短い潜時で反応を開始することができるかもしれない. この2点について検討すべく,まず,relaxation時に発現する筋放電の出現条件について検討し,一定筋力発揮状態(20%MVC以下未満及び80%MVC以上)では特有の筋放電が出現しない,もしくはその発現を判定できないため,少なくとも20%MVCを超え80%未満の筋力発揮があることが基本条件である.筋出力漸増状態からのrelaxationでは,一定発揮状態よりもrelaxationすること自体がより難しい課題となるため,パフォーマンス向上に利用するには一定量の筋出力保持状態からのrelaxationが望ましいことが示唆された.また,この現象を応用するには,筋の収縮と弛緩時における筋-腱複合体の挙動とその粘弾性がパフォーマンスに及ぼす影響についても考慮する必要があり,考察を加えた.
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