本年度は、前年度からの継続で、実際に運動遊び指向を指導方針に置くクラブ(競技志向が比較的弱い)に所属するジュニア・ラグビー参加者を対象に調査活動を行った。調査の結果については、さらに来年度の前半とともに集計および分析を行なう予定である。 また、理論面については、「キレる子ども」「閉じこもる子ども」に対してスポーツ教育はどのような貢献ができるかについて、(1)過去の学校体育の中で行なわれてきた人間形成論を振り返るとともに今後の課題、展望について、(2)ラグビー以外の体験学習(野外教育プログラム)によってどのような支援が可能かについて、考察を行なった。学校体育における人間形成としては、コミュニケーションスキルさらにはソーシャルスキルの獲得を主目的にした授業展開も可能である点などから、他教科と比較しても人間形成としての機能を果たせる可能性が提示できた。本研究の成果は、子どもの変化に対応した時代の要請に応えうることで、スポーツ教育にとどまらず学校における教科としての体育の意義についても提示可能と考える。野外教育における体験としては、本研究で重視する否定的感情(つらい、厳しい、嫌だなど)をさまざまな実体験を通じて克服する際に、仲間やカウンセラーとの信頼関係を築くことが重要な要素として指摘された。今後は、野外教育で提示されたこれらの点と、身体接触を伴う活動との共通点、相違点について調査および考察を進めていきたい。 以上の点については、平成17年11月23日に筑波大学で開催された日本スポーツ教育学会第25回記念国際大会のシンポジウムにて近藤良享氏(筑波大学)、友添秀則氏(早稲田大学)、坂本昭裕氏(筑波大学)とともに発表をした。またこの際、イギリスおよびアメリカにおけるスポーツ教育の捉え方についても海外からの参加者から意見を聞くことができた。
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