3年度計画の初年度にあたる平成16年度は、下記のように研究を進め、その成果の一部を2つの研究論文として発表した。 1.舞踊運動を評価する観点(観察の眼)の抽出 舞踊運動を運動的側面から評価する観点を抽出するために、言語を道具とした評定用語を設定することにした。具体的に、スポーツ専攻学生106名に対して8つの基本感情を表現した舞踊運動を評価する評定実験を行うことによって評定用語の妥当性・信頼性の検討を経て、舞踊運動の運動的側面から評価に用いる評定用語を19対38語で設定した。 2.8つの基本感情を表現した舞踊運動の運動分析 1の評定実験で用いられた8つの基本感情を表現した舞踊運動の運動特性を3次元動作解析における分析の観点-動きの大きさを示す指標になり得るのではないかと考えられる各身体部位の移動距離、動きの速さとその変化を視覚的に示すための各身体部位の速さ及び速さの分布-から明らかにした。 3.舞踊運動を評価する観点(観察の眼)の検証 1で設定された19対38語の評定用語を用いて、舞踊経験の異なる3つのグループ(舞踊熟練者、ダンス授業の経験を持つ教師、スポーツ専攻学生)に8つの基本感情を表現した舞踊運動を評価する実験を行った。3つのグループの中で舞踊熟練者を基準とした評価の差の検討、2で行われた8つの舞踊運動の運動特性と評価との検討を通して、舞踊経験の差は、舞踊を観察する眼である評価する能力と対応するという結果が得られた。さらに、基準とした舞踊熟練者の評価と学生及び教師の評価では、教師の評価が学生の評価より舞踊運動の持つ運動特性を評価できると推測されるが、全体としては、両者のグループとも舞踊運動の持つ運動特性を舞踊熟練者と同様に評価するには至らなかった。
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