研究概要 |
有酸素性運動トレーニングは、大動脈などの中心動脈の伸展性を増大させるが、このトレーニングによる中心動脈の適応がどのようなメカニズムで引き起こされているのかは不明である。そこで我々は、有酸素性運動トレーニングによる大動脈伸展性増大のメカニズムを分子レベルで解明することを計画し、有酸素性運動トレーニングによる大動脈伸展性の増大にどのような遺伝子が関与しているのかを検討することを目的とした。昨年度は、まず運動トレーニングによる大動脈伸展性増大の適応機序における関連遺伝子のプロファイリングを行うため、3,800遺伝子の発現を定量的に評価することができるマイクロアレイを用いて遺伝子発現の解析を行った。4週齢の雄SDラットにトレッドミルによる走トレーニング(30m/min,60分/日,5日/週)を4週間行い、大動脈におけるmRNAの発現を解析・評価したところ、大動脈伸展性に血管拡張・収縮因子として関連する可能性のある29遺伝子が抽出された。本年度は、マイクロアレイにより抽出された候補遺伝子のうち、プロスタグランディンEP2レセプター(PGE-EP2R)、プロスタグランディンEP4レセプター(PGE-EP4R)、C型ナトリウム利尿ペプチド(CNP)、そして内皮型nitric oxide合成酵素(eNOS)について詳細な検討を行った。PGE-EP2R、PGE-EP4R、CNP、eNOSのmRNA発現を定量PCRで確認したところ、いずれのmRNA発現もトレーニングにより、有意に増大していた。さらに、これらのmRNA発現と大動脈伸展性との関係には、相関関係が認められた。これらの結果より、運動トレーニングによる大動脈伸展性増大のメカニズムの一部には、トレーニングによるPGE-EP2R、PGE-EP4R、CNP、eNOSの遺伝子発現の変化が関与している可能性が示唆された。
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