平成16年度にはオーストラリア・キャンベラ特別区を拠点に芸術省やスポーツコミッション等を対象として、平成18年度にはオーストラリア・ブリスベン市を拠点に市のコミュニティ・ライフスタイル部局やクウィーズランド・スポーツアカデミー等を対象として、各々4週間、6週間程度現地に滞在し、インタビュ調査および資料収集を実施した。 上記調査活動から、オーストラリアではスポーツ産業振興が優先政策の上位に位置づけられなかで、国益と市場の活性化が同時に追求されるネットワーク・ガバナンスの動態を把握することに努めた。そして、収集した一時資料やインタビュ内容の分析を通じて、スポーツ産業振興政策における連邦・州・都市間の重層・交錯的なネットワーク形成の特徴を明らかにした。 研究期間中には、申請者の研究室ホームページにおいて小論文を随時掲載した。そのタイトルは「オーストラリアACT政府によるスポーツ振興政策の特徴」(04年6月)、「大都市における移民・難民対策をめぐる課題」(05年6月)、「大都市スポーツ行政が直面する近年の課題」(同)・「国家の発展戦略と大規模スポーツ大会-中国および豪州の事例に注目して-」(07年1月)、「地域活性化の拠点としての大学スポーツ-豪州における施設とイベント-」(同)となっている。さらに、「スポーツ産業政策におけるネットワーク・ガバナンスの諸相と動態-オーストラリア連邦と首都特別地域における諸政策-」(宇都宮大学国際学部研究論集、第23号、2007年3月1日)が最近の業績である。 オーストラリア社会における人々の意識や価値観の変容、社会環境の変化、さらには国内外の市場・経済の展開状況の影響を受けながら、スポーツ産業領域におけるネットワーク・ガバナンスそのものが揺れ動いているのであり、今後はこうした動態変化を他都市との比較を通じた観察・分析によって追求していきたい。
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