研究概要 |
野球のバットの力学的特性を変えることが打動作にどのような影響を及ぼすかについて、動作自動計測システムを用いて収録、解析した。 標準バット(長さ0.845m、重さ0.900kg、慣性モーメント0.0496kgm^2)の重さを±30%増減しても打動作には大きな影響を及ぼさないことがすでに報告されている(平野,2003)ので、長さを含めた形状は変えずに、重さを±50%増減させたバットを作成した。また、長さに関しては、野球規則の適用範囲内ということで、重さを変えずに、長さを±18%増減させたバットを作成した。さらに、重さ-50%バットに可動式リング(450g)を取り付けることによって、重さと長さを変えずに慣性モーメントを±10%増減させたバットを可能にした。以上3項目の特性の増減相対値は、項目間の比較を可能にするものではない。 大学野球選手10名、一般学生10名に、同意を得た上で、動作自動計測のためのマーカーを張り付け、吊り下げた固定ボールを、上記の3項目7種類の力学的特性をもつバットを用いて打撃してもらった。その動作を250Hzでサンプリングし、マーカーの空間座標値を構築した。 その結果、この範囲の特性の違いにおいて、大学野球選手については、 ・バットが軽くあるいは短くなると、スイング後半からインパクトまでの腰、肩の角速度が低下しない。 ・バットが軽くなると、投手側にある腕の肩に対して動く範囲が大きくなるが、短くなってもその影響は小さい。 バットが長くなると、スイング初期のバットの角速度が低下するが、重くなってもその影響は小さい。 が明らかになった。 バットの慣性モーメントの違いが打動作に及ぼす影響について、および野球経験の違いによって打動作に及ぼす影響が異なるのか、については現在解析中である。
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