運動中には、活性酸素の生成量も強度依存的に上昇する可能性が高いが、一過性の運動にあたり運動中に生体が受ける酸化ストレスの程度はどの程度なのかが必ずしも明確になっていない。本研究は、酸化ストレス防御の観点から「健康に資する至適運動強度の根拠を提示する」ことを背景に据えつつ、運動強度上昇にともなって生じる物質の変動が酸化ストレス防御能を変容させる機序を、特にlactateに着目して明らかにしようとするものである。本年は昨年に引き続き、運動強度とラジカル発生量との関係、ならびに鋭敏な酸化ストレスマーカーの探索を進めた。実験には人を対象として最大運動負荷テストを行ったが、その結果、運動強度依存的に血液の鉄還元能が上昇し、電子スピン共鳴装置を用いてスピントラップ法で測定したヒドロキシラジカルの発生量は、逆に運動強度依存的に減少した。このことは、運動強度が強くなるにつれて抗酸化能力が上昇していることを意味しているものと考えられた。ここで、運動強度にともなって血中濃度の高まるlactateの変動と抗酸化能との関連が認められ、乳酸にスカベンンジング作用がある可能性が考えられたため、この事象について学術誌に報告する予定である。また、運動中の代謝変化に対応する酸化ストレスマーカーについて引き続き明らかにしていく予定である。
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