本研究では、電子スピン共鳴法(ESR)を用いて運動時の血漿がヒドロキシルラジカル生成にいかなる影響を与えるか、血漿の鉄還元能ならびに血漿乳酸との関わりを調査し、身体運動の強度と抗酸化能の変動を明らかにすることとした。6名の男性被験者(21〜25歳)に、自転車エルゴメータにより負荷漸増法によって最大運動を課した。負荷は50Wから4分毎に25Wずつ負荷を上げ、60rpmを維持できなくなった時点をall-outとした。肘前静脈より安静時、各負荷段階、all-out、運動後10分後、1時間後に血液を採取した。抗酸化能として、鉄還元能(Fe3+→Fe2+)を測定した(WISMERLL社製;FRAS4)。各負荷段階では、血漿添加によるヒドロキシルラジカル発生量は、ESR(BRUKER biospin社製;ESR-300E型)を用いDMPO(sigma社)を利用したスピントラップ法により測定した。なお、ヒドロキシルラジカル生成量は、最大シグナルのピークの上半分の高さの平均値とした。乳酸ならびにピルビン酸は酵素法(協和メデックス;デタミナーLA)により比色測定した。測定はすべて二重測定とした。さらに、物理的な運動量をそろえた条件で別途運動を課し(50W×90分および150w×30分)、50W×30分群とともに、強度と時間の要件から血中乳酸のヒドロキシルラジカル・スカベンジング能力を負荷漸増法と比較検証した。ヒドロキシルラジカルの生成量は、運動強度の上昇につれて減少した。逆に、血漿の鉄還元能は運動強度の上昇にともない高まった。このことは運動強度の上昇によって血漿の抗酸化能が高まることを示すものである。また、乳酸の上昇とシグナル強度には一定の関係が認められており、身体運動によって上昇した血漿乳酸がスカベンジャーとして機能していることが推察された。
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