研究概要 |
本研究は跳躍運動における足関節の足底屈運動について足関節底屈運動にかかわる二関節筋である腓腹筋と一関節筋であるヒラメ筋の役割について検討した.腓腹筋とヒラメ筋の足関節底屈にかかわる運動制御の役割を検討するために,骨格筋配列を任意に変化させられる物理モデルを用いた. 理論的解析では,2リンク2関節の系における3対6筋の機能別実効筋概念を下腿部に適用し,下腿部における機能別実効筋モデルを作成し,下腿と足の2リンクの系における足先での出力分布決定法を検討した.その結果,跳躍動作中にヒラメ筋および腓腹筋が短縮して筋力を発揮すると足先での出力方向が垂直方向から水平方向へと変わり,跳躍に対してネガティブな影響があることが明らかとなった. 次に,被験者の跳躍時の腓腹筋およびヒラメ筋の筋長の変化と筋活動の動態を検討した.被験者の垂直跳び動作をデジタルビデオカメラで撮影し,腓腹筋とヒラメ筋の筋長変化を算出した.また膝関節および足関節周りの筋群のEMGを導出した. 跳躍のための物理モデルは次のアクチュエータを用意した.膝関節伸展アクチュエータには引張りばね,足関節底屈アクチュエータは引張りばねを装備するものと一切装備のないもの2パターンを用意し,また,二関節筋である腓腹筋機能として膝関節と足関節に同時作用するワイヤ装備したものと腓腹筋を装備しない2パターンを用意した.これらの組み合わせにより(1)膝関節伸展アクチュエータのみ,(2)膝関節伸展アクチュエータと足関節底屈アクチュエータ,(3)膝関節伸展アクチュエータと腓腹筋,(4)膝関節伸展と足関節伸展アクチュエータおよび腓腹筋の全部で4パターンの物理モデルを準備した.このうち,膝関節のアクチュエータのみのモデルは,足関節がフリーの状態では床への力の伝達ができないため,足関節を固定して用いた.その結果,跳躍の高さは,(3)>(4)>(2)≒(1)であった,また,空中での回転運動は(1)>(2)>(4)≒(3)であった.これらのことは,跳躍運動においてヒラメ筋は跳躍の高さおよび空中での安定姿勢に貢献せず,その機能を担っているのは腓腹筋であること示した.
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