研究課題
MELASは脳卒中様症状と高乳酸血症を特徴とするミトコンドリア病であり、頭痛・嘔吐発作、進行性知能障害、筋力低下、低身長などの臨床症状が報告されている。ミトコンドリアDNA(mtDNA)の3243A>G変異がMELASの主な病因変異である。NARPは発達遅滞、網膜色素変性、痙攣、失調、末梢神経傷害とそれに起因する筋力低下と感覚障害を主徴とするミトコンドリア病であり、mtDNAの8993T>G変異が主な病因変異である。mtDNA変異により引き起こされる細胎内応答を明らかにし、ミトコンドリア病の分子メカニズムを解明する手がかりを得るために、3243A>G変異、8993T>G変異をもつサイブリット(2SD細胞、NARP3-1細胞)を用いて、DNAマイクロアレイによる遺伝子発現解析を行った。その結果、DNAマイクロアレイの結果、2SD細胞はコントロールの143B細胞と比較して、転写調節、アミノ酸代謝、アミノ酸輸送、翻訳制御、tRNA合成、代謝、細胞周期停止などに関わる遺伝子の発現が上昇していた。NARP3-1細胞では、転写調節、アミノ酸代謝、翻訳制御、エネルギー産生、細胞周期停止などに関わる遺伝子の発現が上昇していた。RT-PCRとwestern blotの結果、2SD細胞とNARP3-1細胞で、CHOP(C/EBP homologous protein)、ASNS(asparagine synthetase)、ATF4(activating transcription factor 4)の発現上昇が確認できた。CHOPのプロモーター領域にはアミノ酸飢餓に応答するamino acid regulatory element(AARE)と小池体ストレスに応答するendoplasmic reticulum stress response element(ERSE)が存在する。一方、ASNSのプロモーター領域にはアミノ酸飢餓に応答するnutrient-sensing response element-1(NSRE-1)と呼ばれるcis-actingelementが存在する。Reporter assayを行った結果、2SD細胞とNARP3-1細胞では、AAREとNSRE-1を介したプロモーター活性が増加していた。またATF4の発現をRNAHこより抑制すると、AAREとNSRE-1を介したプロモーター活性が減少したことから、CHOP、ASNSのAAREとNSRE-1を介した発現上昇がATF4によって活性化されていることが示唆された。以上の結果より、正常なミトコンドリアを持つ143B細胞と比較して、MELAS、NARP変異を持つ2SD細胞、NARP3-1細胞では、CHOP、ASNS、ATF4の発現量が増加していることが判明した。
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