1 研究目的 平成16年度の研究目的は、フランスにおける1965年のドーピング法の成立と展開の過程を明らかにすることである。このためドーピング法の成立背景、立法過程及び法律の構造を検討すること研究課題とした。 2 研究結果 (1)立法の背景 東京オリンピックにおけるドーピング規制に関する問題提起、ベルギーでサイクリング大会及びスポーツ競技会の参加者に対する興奮剤の投与を禁止する法案が提出され、1965年にドーピングに関する法律が制定されたこと、イタリア、ベルギー、スイス、オーストリアで反ドーピング運動が1960年前後に活発化していたこと、ヨーロッパ評議会でも1962年から学校外教育委員会などでドーピング問題が議論されたこと、フランスフットボール連盟規約、フランスボクシング連盟規約、国際フェンシング連盟規約、国際サイクリング連盟規約などにドーピング禁止規定が存在したこと、1963年に競技スポーツマンのドーピング及び生物学的な調整準備に関する第1回ヨーロッパ・シンポジウムが開催され、ドーピングの規制については、法的措置によらなければ十分な効果が期待できないことの合意が形成されていたことを明らかにした。 (2)立法過程 特に立法過程の争点として、(1)刑罰の適用、(2)検査手続き、(3)未成年者への刑の適用、(4)ドーピング検査の対象となる競技会の範囲、(5)故意犯の認定の問題について分析した。 (3)法律の構造 (1)ドーピング物質の使用に対するドーピング罪としての罰金、(2)共犯に対するドーピング罪より重い罰金及び拘禁、(3)ドーピング検査手続き(容疑者に対する採血・検査の実施)、(4)裁量的補充刑としてスポーツ競技会への参加、組織、運営の禁止の4つの構造を明らかにした。 3 研究成果の発表 平成16年12月19日に日本スポーツ法学会第12回大会において「フランスにおける1965年のドーピング法に関する立法過程研究」というテーマで研究発表を行い、同学会年報に論文が掲載される予定である。
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