研究概要 |
パフォーマンス・プレッシャーが運動スキルの遂行時における生理的・心理的影響に比べて、行動的影響に関する研究は少ない。そこで本研究においては、単関節運動を課題として用い、一過性の心理的ストレスであるパフォーマンス・プレッシャーが四肢内協応に及ぼす影響を明らかにすることを目的とした。右利きの大学生19名(男性9名、女性10名)が実験に参加した。実験課題は右手でアームレバーのハンドルを握り、肘の伸展-屈曲-伸展運動による目標波形の産出を学習することであった。被験者は、習得として80試行を行った後、ストレス条件下でのテスト試行として10試行を行った。習得80試行終了後に被験者にストレス喚起の教示を与えた。その内容は、テスト10試行中に基準値を越えたエラーが1試行以内であれば賞金5,000円が与えられるが、5試行以上であれば電気刺激が与えられるというものであった。基準値は習得後期(20試行)における被験者自身のエラーの平均値+1SDとした。ストレス負荷の操作チェックのために習得40試行終了後に状態不安得点(STAI)、脈拍、唾液中クロモグラニンAを測定し、ストレス喚起の教示直後にSTAIと脈拍の測定を行った。また、テスト後に脈拍とクロモグラニンAを測定し、心理的・行動的影響に関する質問紙に回答させた。また、習得とテストにおいて、被験者の上腕二頭筋と上腕三頭筋の筋放電量を測定した。操作チェックの結果、ストレス教示は心理面生理面に影響を及ぼしたことが明らかとなった。テストにおいては、19名中3名が習得後期のパフォーマンスを維持したが、16名がパフォーマンスの低下を示した。また、基準値を越えるエラーが5試行以上であった被験者は6名であった。現在、行動的特徴に関するさらなる分析を進め、次年度継続の研究における四肢間協応を含む運動課題の選定ならびに分析方法の検討を行っている。
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