[目的] 平成17年時点で日本は65歳以上の人口が全人口の20%を超える超高齢国家である。今後予想される高齢化の進展に伴い、転倒骨折(筋肉・骨減弱症)などによる寝たきり患者の増加が予想される。加齢に伴う筋肉・骨減弱化の原因として、体蛋白質合成能力の低下と蛋白質摂取量の低下による末梢組織へのアミノ酸供給不足が考えられる。これらを防ぐには十分な蛋白質を摂取することに加え、蛋白質合成を刺激するレジスタンス運動の実施が必要であると考えられる。本研究では、グルココルチコイドを投与し筋肉・骨を減弱化させた高齢化モデルラットを用い、自発的クライミング運動を日常化させながら、1日2回の主たる食餌に加えて1日の総摂取蛋白質量の70%を含む高タンパク質間食(カゼイン間食またはBCAA間食)を摂取させることで、筋肉・骨の減弱化を抑制できるか否かを検討した。 [方法] 明期8〜20時、室温25℃、湿度50〜60%の環境下で、5週齢のWistar系雄ラット55匹を4週間のクライミング運動適応後、C群:成長期モデル+安静、N群:高齢化モデル+安静、S1群:高齢化モデル+安静+カゼイン間食、S2群:高齢化モデル+安静+BCAA間食、NE群:高齢化モデル+運動、SE1群:高齢化モデル+運動+カゼイン間食、SE2群:高齢化モデル+運動+BCAA間食に分け8週間飼育した。1日2食制(8:30〜9:30、20:30〜21:30)下で、間食摂取群には12:30〜13:30に高蛋白質間食を摂取させ、運動群には21:30〜8:00にクライミング運動を実施させた。 [結果] ヒラメ筋重量はクライミング運動の実施により有意に大きくなった。安静群では、ヒラメ筋重量がN群と比較してS2群で有意に大きくなったことから、BCAA間食による筋減弱化抑制が示された。脛骨の重量、最大荷重、Ca含量はクライミング運動の実施により有意に大きくなった。しかしいずれの高蛋白質間食も有意な効果は認められなかった。以上の結果から、筋肉・骨減弱化抑制にはクライミング運動の実施が最も効果的であることが示された。また、BCAA間食は筋減弱化抑制効果を示したが、骨減弱化抑制効果を示さなかった。
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