研究概要 |
酸化ストレス刺激により観察される骨格筋糖取り込み亢進に細胞内のAkt/PKBのリン酸化が関与することを明らかにし、その上流に位置するPI3キナーゼを薬理的に阻害すると、骨格筋の糖取り込み亢進が完全にブロックされることを報告した。本年度は、PI3キナーゼの活性化の上流因子と下流因子を探るため、モデルマウスの予備実験を行った。薬理的な刺激による骨格筋の糖取り込み亢進について、ラットで観察された過酸化水素刺激による糖取り込みの亢進がマウスにおいても認められるか、検討した。C57/BLマウスのEDL筋を素早く摘出し、糸で両側を固定し改良した筋固定器具に装着し、KRB緩衝液に浸し、37度、95%O_2,5%CO_2ガス下でインキュベートした。KRB緩衝液内には酸化ストレス刺激剤として過酸化水素を添加し20分間の刺激後、アイソトープラベルされた[<14>^C]-Mannitol及び[3^H]-2-deoxy glucoseを用いて糖取り込み速度を測定した。その結果、濃度依存的に糖取り込み速度は増加するものの、ラットで観察される2倍以上の亢進は認められなかった。従って、下流の因子の検討を行う前にモデルマウスの妥当性を再検証するとともに、下流の因子であるAS160及びPRAS40を探る実験条件を検討中である。なお、本研究の一部は、海外共同研究者であるジョスリン糖尿病センターの代謝部門長のGoodyear LJ氏、助手の藤井宣晴氏と共同で行った。
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