研究概要 |
麻酔下ラットにおいて電気刺激による筋収縮とモーター駆動により下肢前脛骨筋に機械的伸張性筋損傷を引き起こした下肢骨格筋損傷モデルを作成した.処置直後・1・3・7日後に屠殺する4グループを各々6匹作成し検体とした.各損傷筋筋腹付近の組織画像を作成し,細胞形態を基準に損傷画像の作成をし各々のグループの損傷度を調べた.NO生成量の定量化は,分光測光法(Griess法)で行った.損傷筋におけるNOSタンパクの発現はSDSポリアクリルアミド・ゲル電気泳動(SDS-PAGE)およびケミルミネセンス法を用い,損傷筋において3種類のNOSタンパク(eNOS, nNOS, iNOS)内容を観察した.また,NO合成阻害剤であるL-NAMEを投与し損傷を引き起こした群および全く処置をしないコントロール群を作成し,モデル群との比較に使用した.実験の結果,損傷筋に生成されるNO合成量は,損傷直後に上昇し損傷1日後に低下した後,3日後,7日後と再び上昇することを観察した.損傷画像の解析では,3日後に白血球の浸潤を伴う細胞の膨化がピークとなるが,7日後には治癒にいたる.これらはL-NAME投与を行い損傷を引き起こした群とは異なる動態であることから、損傷3〜7日後の過程において,上昇したNOが何らかの役割を果たしていることが考えられた.また,通常は骨格筋中に存在しない誘導性一酸化窒素合成酵素(iNOS)が損傷筋中には多く存在し,NO生成に拍車をかけていることがわかった. iNOS生成に関与する細胞内カスケードにおいては,NFκB, IκB, AP-1,c-Jun等があるが,これらの因子が骨格筋の損傷治癒段階でNOと関連して増減することをつきとめた.これにより骨格筋の治癒は筋細胞のアポトーシスが一つの要因であることがわかった.現在はNOがアポートーシス過程のどの段階で関与しているのかを検討している.
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