運動は体たん白質合成を高める。トレーニングをすると、実際に骨格筋は肥大し、その量および質が向上することになる。しかしながら、運動やトレーニング、そして運動後に摂取する栄養素が、どのような機序により体たん白質合成を高めるかについては明確な結論を得ていないのが現状である。そこで、本研究では、一過性運動および5週間のランニングトレーニングがラット骨格筋における体たん白質合成の翻訳開始調節機構に及ぼす影響について検討した。なお、ここでは、体たん白質合成の翻訳開始段階での調節において、重要な働きを持つ翻訳開始因子4E-BP1およびS6K1の活性に着目した。 その結果、 1)ロイシンの経口投与(135mg/100g body weight)により、ラット骨格筋におけるリン酸化した4E-BP1量やS6K1量は上昇し、ロイシンの持つたん白質合成刺激作用が確認できた。 2)しかしながら、一過性運動により、ラット骨格筋におけるリン酸化した4E-BP1量やS6K1量は影響を受けなかったことから、一過性運動のもつたん白質合成刺激作用は認められなかった。 3)さらに、5週間のランニングトレーニングでも、ラット骨格筋におけるリン酸化した4E-BP1量やS6K1量は変動しなかったことから、ランニングトレーニングがもつたん白質合成刺激作用はなかった。 これらのことより、ラット骨格筋において、ロイシンの関与するたん白質合成刺激作用と一過性運動やトレーニングのその作用の過程には相違があるのではないかと推察された。
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