最終年度は、これまでの2年間で構築されたfMRI撮像環境下での測定検査システムと検証された実験デザインとデータ解析法を用いて、局所的な血流制限(虚血)下の筋運動中の大脳皮質一次運動野の神経活動を調べ、さらにその神経活動と力の知覚との関係についても検証した。 その結果、虚血は、たとえ発揮される筋力レベルが同様であったとしても(虚血なしに比べ)一次運動野の神経活動を有意に増加させることが分かった。この虚血による一次運動野の活動の増強は、虚血の末梢神経機能への影響がないこと(正中神経刺激による神経活動電位と体性感覚誘発電位のN20の潜時及び最大振幅を自然血流下と虚血下で比較したが変化はみられなかった)、そして筋電図積分値に差異がみられなかったことから、脊髄下での神経活動の変化もその原因の一つであろうと推察される。また、この虚血に誘発される一次運動野の活動の増強には、発揮筋力レベルに関係なく、力の知覚の追加的な増加をともなうことが明らかとなった。また主題から少し離れるが、局所的な血流制限による虚血が、感覚受容器の脊髄への神経入力の程度を変化させる一つの方策である可能性が示唆された。 言うまでもなく、ヒトの全てのアクションの原動力は筋肉であり、そのアクションの多くは何らかの意味をもつ。ヒトは筋収縮により、何を感じ、それらをどのように意識的に知覚するのか、力覚を切り口に意識的な知覚と大脳皮質の神経活動について、さらに研究活動を進めていきたいと考えている。
|