研究概要 |
運動後の糖質摂取にともなって、筋が多量の糖を取り込むと筋グリコーゲン超回復が生じるが、このとき糖取り込みに対するインスリン感受性が低下する。本研究はこのメカニズムを探ることが目的である。 まず、グリコーゲン超回復にともない、グルコースから脂肪への変換合成に関わる遺伝子発現が上昇し、それにともなった筋内脂肪蓄積がインスリン感受性低下を引き起こす原因であるとの仮説を検討した。しかし、運動後、糖質を摂取し、グリコーゲン超回復が生じたラットの骨格筋では、脂肪変換酵素であるACC-1のタンパク発現の上昇はみられなかった(Western Blottingで測定)。また、脂肪変換酵素の遺伝子発現を引き起こす転写因子であるSREBPの発現上昇もみられなかった(Western Blottingで測定)。このように、脂肪変換酵素発現上昇がグリコーゲン超回復筋におけるインスリン感受性低下の原因であるとの仮説を支持する実験結果は現在のところ得られていない。 さらに、我々は、グリコーゲン超回復筋におけるインスリン感受性低下がインスリン情報伝達酵素の活性不全によって生じる可能性を検討した。運動したラットに糖質食を摂取させると、摂取開始4,8,16時間と経過するにつれて徐々にインスリン感受性が低下したが、このとき、インスリン感受性低下の時間経過はインスリン情報伝達酵素PKB/Akt, p38 MAPKのリン酸化状態(Western Blottingで測定)の低下における時間経過と完全に一致した。したがって、PKB/Akt, p38 MAPKの低下がグリコーゲン超回復筋におけるインスリン感受性低下の原因である可能性が高い。現在、インスリン情報伝達酵素活性を低下させる要因について、G0/G1 switch protein, Musclinといったタンパク発現の役割に着目して検討中である。
|