研究概要 |
筋が大量の糖を取り込むとグリコーゲン超回復が生じ、それとともに何らかの遺伝子発現が生じ、その遺伝子産物がインスリン情報伝達系を阻害して、インスリン感受性低下を引き起こす可能性がある。その候補遺伝子として、我々は、musclin, GO/G1 switch proteinに着目した。 Musclinは、インスリン作用を阻害する骨格筋由来内分泌因子であるが、絶食による糖質枯渇にともない発現が減少することが報告されている。本研究でも、ラットに18時間の絶食を負荷することによって、上腕のtriceps(TRI)筋におけるmusclin mRNA発現量が34%減少することをRT-PCR法によって確認した。また、ラットに絶食を負荷し、その後、糖質食を4,8時間と再摂食させると、グリコーゲン超回復が生じるとともに時間経過で上腕のepitrochlearis(EPI)筋におけるインスリン感受性が低下する。しかし、このとき、TRI筋におけるmusclin mRNA発現に有意な増加はみられなかった。この結果は、musclinがグリコーゲン超回復にともなう筋のインスリン感受性低下に関与しない可能性を示す。 一方、G0/G1 protinはPPARαの発現を介してインスリン抵抗性を惹起する可能性がある。絶食後の糖質再摂食にともなう時間経過でみると、インスリン感受性低下に先んじて、G0/G1 protein mRNAが増加していた。このことは、G0/G1 proteinがグリコーゲン超回復筋におけるインスリン感受性低下に関係している可能性が示唆される。 また、再摂食前に運動を負荷するとインスリン感受性低下の発現を遅延させ、グリコーゲン超回復の程度を高めることができた。この効果は、運動が再摂食によるインスリン情報伝達酵素(Akt)活性低下とG0/G1 protein発現増加を抑制するためかもしれない。
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