本年度の研究目的は、4種類の系列追従運動スキル学習の刺激(S)-反応(R)の型(S-S型、S-R型、R-S型、R-R型)を基礎にして、6つの系列位置から構成された系列パターン(251364)の異なる運動系列課題で、フィードバック制御段階(習得)のレベルがその後の適応制御段階の見越し機能の発現様式や適応能力の頑健性に及ぼす効果について体系的に評価することである。被験者は大学生40名(男子20名、女子20名)で、各被験者は4つの系列追従反応事態に対応した4群に各10名ずつ割り当てた。まず各群の被験者は、フィードバック制御段階の4つの反応事態[S-S群は系列刺激の呈示のみで反応なし。S-R群は、系列刺激の呈示に対する系列追従反応で、両群とも刺激呈示間隔時間(ISI)は500msec。刺激点灯時間は100msec。R-S群は最初の系列位置に刺激が点灯され、正反応の場合のみ(R-S間隔時間0msecで)次の刺激が点灯される。R-R群は、刺激呈示順序はあらかじめ決められているが、それらの刺激が点灯されない事態で、正反応の場合は刺激呈示なし。誤反応の場合は正しい系列位置に刺激が呈示され(フィードバック情報)正反応で刺激は消える]で、1系列1試行として30試行追従した。その後、4群とも適応制御段階1(ISIが変化:500msec→400msec)ではS-R反応事態で、さらに適応制御段階2(系列位置変化:251364→521364)ではR-R反応事態で共に30試行追従した。その結果、1)フィードバック制御段階では、R-S群が最も誤反応は少なく正反応間隔時間の短縮と反応の安定性が認められた。これは次刺激の発現タイミングを自己ペースで決定できるためである2)適応制御段階1では、最初の5試行ではS-R群が高い適応力を示したが、その後はS-S群で、無・誤反応の減少と正反応と見越し反応の相補的な交替により高い適応力が認められた。R-S群の見越し反応の発現頻度は他の3群よりも少なかった。3)適応制御段階2での適応力の高い頑健性は、フィードバック制御段階で多くの誤反応を修正し系列全体の文脈構造を徐々に形成したR-R群で見出された。これらの結果に対して、系列依存性と反応冗長性の観点からも検討した。
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